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2008年4月 4日 (金)

レフト・アローン

 著者初の短篇集。
 「レフト・アローン」火星で勢力争いする列国の最前線で戦う、サイボーグ兵士ジロウ。現実世界(フィゾーグ)に仮想世界(ヴァーディグ)を重ねる様子はアニメ「電脳コイル」を過激にした雰囲気。KTというキャラは長編『クリスタル・サイレンス』にも出てくるらしいが、古本で買って読まずに売ったような気がする。
 「猫の天使」ガブリエルと名付けた野良猫の視神経と脳に、非合法にモニタを付け、猫の視覚情報処理系を調べているコージ。突然起きた教会立てこもり事件で、人質とともにガブリエルが教会に閉じ込められたことで、コージは警察に協力することに。ところがあることをきっかけに、猫の視覚画像に奇妙な、あるはずのないものが写りはじめる。
 「星に願いを ピノキオ二〇七六」受精卵の遺伝子をチェックしたり、生まれたこどもの体内に健康モニタを取り付けたりするようになった時代。電脳空間の人工生命体が病院の医療器具をハッキングし、新生児の脳にみずからをダウンロードした。
 「コスモノーティス」人類が滅び、地球が青い星ではなくなった未来。宇宙ステーションや探査機や恒星間宇宙船が、生命体として宇宙空間に生きている。「ステーション人」のマーサに寄生して生きる「ソーラーセイル人」のロッコはある日、どこからか呼びかけるような声を聞く。
 「星窪」アマチュア天文家の友人に招かれた雑誌編集者の主人公は、これからなにかが起こると言われて天体観測装置のディスプレイを眺めながら、奄美大島にあるクレーターや隕石について聞く。友人の曾祖父が奄美大島に住む日本画家と交わした手紙に書かれていた不思議な物語。

 人間と機械の関係に関わるアイディアは、グレッグ・イーガンに似てる部分もあるが、あっちにくらべてとっつきやすい。翻訳のせいか、描き方のせいか、説明がこなれてるのか。ちょっと軽い感じもあるが、読みやすいのはよい。
 猫の視覚をモニタするアイディア、おもしろい。
 ウェットウェアを得たソフトウェアの行く末が気になる。
 先日亡くなったクラークの「太陽からの風」を読んだとき、ソーラーセイリングの描写に、地味でつまらない印象を受けたが、まさかこれを擬人化する手があったとは。わくわくする話になっている。
 表紙の写真、星空をバックにプラネタリウムがあるんだとばっかり思ってたら、花だった。あれえ?

『レフト・アローン』藤崎慎吾、2006。ハヤカワ文庫SF。

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