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2008年5月25日 (日)

エンディミオン、エンディミオンの覚醒

 前作『ハイペリオンの没落』で人類の銀河連邦が崩壊してから、三世紀。人類はカトリック教会「パクス」の元で、再び統一されようとしていた。惑星ハイペリオンの地下で採取される寄生体〈聖十字架〉が人間の死からの復活を可能にし、これを制御するパクスが人々に絶対的な権力を誇示していた。そんな中、ハイペリオンで狩猟ガイドをする青年ロール・エンディミオンは、三世紀前のハイペリオン巡礼団の生き残りマーティン・サイリーナスから、絶対不可能としか思えない頼まれ事を引き受ける。

 以前読んだときはストーリーを追うのに気を取られ、ついつい流し読みしてしまった部分もあったし、未来の一部を予見しているヒロイン、アイネイアーの心情が(主人公ロール同様)理解できずにもどかしい部分もあった。
 話の概要を知って再読すると、おもしろさも感慨もより深くなる。それはまちがいない。
 しかし、不満がすべて解消するわけではない。
 レイチェルとカッサードには、読者の見ている前で、いずこの時へなりと旅だってもらわないと、ハイペリオン二部作につながらなくてやや不完全燃焼である。なんのために再登場したんだ?
 リュージュ、ハンググライダーなど、命がけの冒険にはらはらするはずのところでも、「何ゆえにそこまでしてるのか?」という疑問が水を差す。
 知ってるのはアイネイアーだけで、主人公は言われるがまま、という状態は、なんともいらいらする。また、すでに決まっていることをなぞっているみたいで、緊迫感が薄れるきらいがある。
 ロールたちの冒険行を通じて、生命の多様性・可能性に圧倒される思いがする一方で、アイネイアー・ウイルスによって、多様性が失われはしないかという不安も。

 何年も先のおもしろい計画って、なんだろう? コアはどうなった? 続編を書いてほしい。
 チベット暴動と四川省大地震があったせいで、ダライ・ラマの発言を読み返したくて再読したが、その件では特に注目するほどのことはなかった。

 いろいろ文句を並べたてたが、多くの人類・生命体が共感力でつながっていく繁栄のビジョンはすばらしい。いろいろな問題が起こり続ける現代にあって、これをいかに実現するかは永遠のテーマだ。

『エンディミオン(上・下)』『エンディミオンの覚醒(上・下)』ダン・シモンズ・著、酒井昭伸・訳、2002。ハヤカワ文庫SF。
 ENDYMION(1996),THE RISE OF ENDYMION(1997) by Dan Simmons.

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