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2008年9月

2008年9月22日 (月)

宮部みゆき3作

『誰か Somebody』宮部みゆき、2003。光文社。

 今多コンツェルンの会長付きの運転手、梶田が死んだ。コンツェルンに勤め、会長を舅(しゅうと)に持つ杉村は、梶田の娘が父親の伝記を書く手伝いをするよう、会長から頼まれる。
 まあまあ。
 話と関係ないけど、最初のほうで離婚の可能性を匂わしておきながら、くやしいくらいいい夫婦じゃないか。おちょくるなよ。
 「天罰」という言葉を使ったことにこだわる杉村の推理が、どうも腑に落ちない。そうかなあ?
 歴史記念館で順路を逆にたどるという「遊び」のおもしろさを体験した杉村が、その後、以下のように考えるのが印象的だった。

 「順路」の表示を逆にたどり、時をさかのぼるのは、
 博物館や歴史記念館を見物したときだけのお楽しみに
 しておけばいい。そして建物から外に出れば、陽が照
 っている。(P.354)


『ブレイブ・ストーリー・上中下』宮部みゆき、2003。角川文庫。

 小学五年生のワタルが、ひょんなことから「幻界(ビジョン)」と呼ばれる異世界に迷い込み、冒険の末、何かを得て現実世界に帰還する。
 まさか宮部みゆきがこんな話に手を出すとは、と思っていた。『龍は眠る』や『蒲生邸事件』で、SFに関心があるとは知っていたが。
 三年前、アニメ映画化され、テレビ放映で観たとき、そこそこおもしろかった(ゲド戦記よりも)のだが、小説は文庫で1500ページ近いのだ。
 いったい宮部みゆきは、あのアニメに描ききれていないどんな話をかいているのだろう? 気にはなっていたのだが、ちかごろファンタジー離れしている上に、最初の400ページ近くが、主人公が現実世界でどん底に落ちていく内容だと聞いて、読む気になれなかった。
 読むきっかけは、ぶっちゃけた話、三分冊の上巻が105円で売りに出たことである。
 一気に読んだ。おもしろかった。見事だった。
 現実での生活がじっくり丁寧に描かれており、読ませる。そんな中でワタルが不思議な出来事にでくわすことも、違和感や不自然さを極力抑える描き方で、徐々に読者を引き込んでいく。ついに幻界に飛び込んだ時には、「夢物語にゃ興味ない、もっとこっちの世界の話を読ませて」と思ったのだが、著者の物語構成の巧みさに、いつしか没頭していくことになる。おきまりとも言えるアイテム探しも、けっこう自然にみえる展開で、ほっとした。オチも、好きなパターン。RPG的ファンタジーに対する著者の考え方、道徳観にも好感が持てる。


『本所深川ふしぎ草紙』宮部みゆき、2001。新潮文庫。

 江戸の町に起こる謎めいた事件を通して、そこで暮らす人々の日々の営みを描く短篇集。
 「片葉の芦」「送り提灯」「置いてけ堀」「落ち葉なしの椎」「馬鹿囃子」「足洗い屋敷」「消えずの行灯」の七編のタイトルは、本所七不思議として知られるものだそうで、著者は物語のなかでそれらを実際に見せたり、あるいは物語の象徴として語ったりするという趣向である。
 各短篇の主人公は、深川に暮らす別個の町人だが、そこに回向院の茂七という岡っ引きが毎回登場し、謎解き役となる。江戸の風情や人情がよく描かれている。変にオカルトに走るでもないのがいい。解説者ほど感動はしてないが、おもしろかった。


2008年9月20日 (土)

まひるの月を追いかけて

 静は異母兄の研吾が奈良で失踪したことを、彼の恋人・優佳利から知らされ、研吾を探して彼女と奈良を旅することになる。古都・奈良の歴史を刻み込んだ古 道を行く旅は、研吾や静自身の来し方を振り返る旅でもあった。
 研吾はなぜ失踪した? 優佳利はなぜ…?、妙子はなぜ…? 最近自分がよく使う言葉だが、肩すかし感あり。これだけミステリアスに物語を運んでおきながら、そんな終わりかたでいいの? 普通の小説らしからぬ展開をしてきたくせに? 深く読み込めばもっとわかることもあるのかもしれないが、読み込む気にならん。

『まひるの月を追いかけて』恩田陸、2003。文春文庫。

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