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2009年7月19日 (日)

物語論で読む村上春樹と宮崎駿

 大塚英志『物語論で読む村上春樹と宮崎駿』読了。
 村上春樹のエルサレム賞受賞と『1Q84』出版、ジブリの『崖の上のポニョ』DVD発売にタイミングよく出版された評論。村上春樹は『1973年のピンボール』しか読んでない。大塚による宮崎駿の評論を読みたくて買った。
 
 日本文学は八十年代に「構造しかない文学」に変容していったという。構造すなわち物語構造が普遍的な様式になることで、村上春樹やよしもとばななといった「サブカルチャー文学」や、まんがやアニメーションが、「汎世界化」したという。文学はわからないが、まんがやアニメは同じような話を何度も繰り返し作ってるような気はする。普遍的とはそのことだろうか?
 神話や物語の類型がいろんな人によって整理されていて(出立―イニシエーション―帰還、みたいに)、村上春樹やアニメがそれに見事に当てはめられるんだそうである。――いいんじゃないか、それ自体は? 通には、つまらないかもしれないが。
 問題は、「しかない」のかどうか、だろう。私の読書範囲では、幸い、そんなことはないような気がする。私程度の読書歴では、「しかない」かどうか判断できないのかもしれない。それはそれで、幸せかもしれない。しかし著者の言うように、日本全体でその傾向が強まっているなら、問題かもしれない。ディスカッションの苦手な日本人が、議論の技術だけではなく話の中身ももたないとすれば問題である。
 村上春樹が書いてきた「構造しかない物語」に、みずからの教えを代入してしまったオウム真理教、それに気づいた村上、という大塚の指摘は興味深い。もちろん私には「なるほど」とひざを打つだけの知識が(村上にもオウムにも)ないのだが。
 村上春樹の初期三部作は、評論されるときに架空の年表が添付されるそうである。作者の来歴ではなく、作中の出来事が年表化されるということである。全共 闘世代の文化現象に「架空の年代記づくり」があるんだそうで、機動戦士ガンダムや指輪物語やスターウォーズが例示されている。架空の年表をみるとわくわくする私は、彼らとなにか共通する意識でもあるのだろうか?

 さて、宮崎駿論だが、宮崎駿が息子・宮崎悟朗の『ゲド戦記』をみて「大人になってない」といったとき、そこに息子の未熟さだけではなく自分自身をもみたのではないか、との指摘はおもしろい。
・・・単に息子の作品がへたくそだっただけ、な気はするが。私はテルーの歌のところで、劇場から出たくなった。
 悟朗版『ゲド戦記』では、アレンよりその影のほうが、自 己実現を願っているようだ、との指摘はもっともである。影がアレンとではなくテルーと一体化してしまうようにみえるのは、とりあえずテルーに憑衣してるだけと解釈できるとも思うが、光と影の統合というテーマがややこしくなるとは言えるかもしれない。

 それにしても、大塚の文章は気に入らない。序文で村上や宮崎の作品の持つ謎を、“これから解明するけど正直どうでもいいことだ”と言い捨てたり、一般には理解できない専門用語の言いっぱなしといい(私はポストモダンわかりません)、推敲してるように思えない文体といい(句読点の位置が変だし、文章のおかしい所もあるし)。誰にでもわかりやすくという姿勢がみられない。それだけならまだしも、「この新書をかなり乱暴に書き下」したとさえ言っており、本当に書きたい別の本に早く着手したいとでも言いたげにみえて、にくたらしい。

 ちなみに大塚はその「どうでもいい問題」の答として、「汎世界化した二人のこの国のつくり手は結局、物語構造に抵抗した結果、等しく「母胎回帰」の物語に至ってしまった」といっている。興味深いので記しておく。くわしくは本書を読まれたい。

 なお本論とは関係なしに、「マクガフィン」の話がおもしろい。観客を作品にひきつけるため、謎の存在(人・物)を配置しておくと、観客はそれが気になって、過剰に作品を読み込んでくれるんだそうだ。ありそうだな。

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