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2010年3月20日 (土)

時に消えたキミと歪曲の十日間

 2010.03.19
 梅村崇『時に消えたキミと歪曲の十日間』読了。
 9月29日。文化祭まで11日に迫った日の帰り道、激しいめまいに襲われた外村零児の前に、奇妙な風貌の女が現れる。青いボディスーツ、白い鎧、オレンジ色の髪。関わりあいになるのを避けて零児はその場を立ち去る。
 翌朝登校すると、なぜか文化祭当日。混乱する零児。あこがれの美月凉香の失踪と、それへの疑いをかけられていることへの驚き。そして時空のゆがみを感じ・・・飛び起きると9月30日の朝だった。悪夢か、と胸を撫で下ろした彼の前に、あの女がいた。
 その女は四次元世界の時空監査官ティムと名乗る。超時空結晶体がまぎれこんだためにこんがらがって崩壊の危機にあるこの世界を修復するために来たという。零児はティムと遭遇したために、ティム同様、この世界の時間の流れを前後バラバラに過ごしながら、結晶体探しと美月さん救出に四苦八苦することに。

 当然、第二の『タイムリープ あしたはきのう』を期待した。あのリープは謎の現象のまま終わったが、今回は時空の混乱のせいというSF的説明がついている。しかもタイムパトロールみたいな女まで出てくる。ストレートでわかりやすくていいや、と思ったのだが。

 『タイムリープ あしたはきのう』では、「なぜこんな現象が起こったのか? どうすれば終わるのか?」という謎が大きな牽引力となって読者をひっぱる。普通の高校生活で不自然ではない範囲でさまざまなことが起こり、あきさせない。謎と謎解きが少しずつ進み、わくわく感を盛り上げる。

 本作の場合、毎日が文化祭準備の日々で、いろんな作業をしているものの、あまりかわりばえがしない。大きな謎のひとつは最初にティムが説明してしまうので、あとは結晶体を探すだけだし、それも、どんな形をしてるかわからないので具体的に探す当てがあるわけでもなく、零児のモチベーションも読者のモチベーションもあがらない。
 『タイムリープ あしたはきのう』にまさるとも劣らない大事件を未然に防ぐという大きな動機があるのに、なにか盛り上がらない。
 時空連続体というチューブがこんがらがって、その中を流れる時間がバラバラになり、ティムと遭遇した零児だけが「正しい」時間の流れで過ごしているために、世界の時間の流れが異常に見える、という面白い設定なのだが、零児に(読者に)知らせるのが早すぎるのでは? 30ページほどのところで明かしたりせず、もっと出し惜しみしてもよかったのでは? 零児と一緒でないときにティムが何をしてるかはっきり見えず、ものたりない。『タイムリープ あしたはきのう』の若松和彦が論理的に謎を解明していく興奮が、ここにはない。
 零児への凉香の態度が日を追って好意的になっていくようなのは、零児としてはうれしいことなのだが、これも割と最初のほうでわかってくるし、零児が積極的にアプローチしてるわけでもないので、受け身でおもしろ味にかける。

 ああ、もったいない! これだけの魅力的な設定が生かしきれてない。

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