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2010年3月10日 (水)

山本弘『神は沈黙せず』

 2010.03.08
 山本弘『神は沈黙せず』読了。
 2012年、神がついに人類の前にその存在を示した年、和久優歌の兄・良輔は失踪した。「サールの悪魔」という謎めいた言葉を残して。
 ・・・という冒頭(少し補筆)から始まる、壮大な山本版「神狩り」の物語。
 と学会会長の面目躍如といえる、オカルト全般にわたる膨大な知識と、現代科学の最先端の成果を駆使して、神の存在を「証明」してみせる力技に圧倒される。
 SFでは、大きな「嘘」をひとつつくためにそれ以外の事ではリアルに徹する、ということをする。本書では、「神の実在」という「虚構」(ある意味で)を読者に受け入れさせるために、天文学や歴史学(パイオニア減速問題や南京虐殺問題など)における著者の実証主義的な真摯な姿勢を明確に示して、あとに続く「空論」の説得力を補強している。
 1972年に打ち上げられたパイオニア10号とそれに続く11号が、計算より減速していることが、観測により確認されたという。さらにヴォイジャー1・2号も。これは、ニュートン物理学の誤りを暗示しているそうだ。これはこの小説が書かれる前に明らかになった事実である。これで驚かされたために、その後の「ウェッブの網目問題」(架空)までリアリティが増して感じられるのだ。
 いっぽう、和久良輔の開発した「ダーウィンズ・ガーデン」は、人工生命好きにはたまらない設定のプログラムだ。遺伝的アルゴリズムとやらを用いて、コンピュータ上で生命の進化をシミュレートするのだ。
 旧約聖書の「ヨブ記」にまつわる議論も興味深い。天災で両親を亡くした優歌たち兄妹の切実な「なぜ?」をヨブの試練にからめ、シモンズ『ハイペリオン』におけるアブラハムの試練(これも旧約聖書)にも匹敵する大きな問題提起となっている。
 普通に料理したのでは、荒唐無稽にしかなりえない話を、見事に感動的にまとめあげた著者の力量に喝采。

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