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2010年3月27日 (土)

魚舟・獣舟

 『魚舟・獣舟』上田早夕里。ホラーっぽいSF短篇集。

 「魚舟・獣舟」遺伝子改変による異形の生物が跋扈する未来。海上民のコロニーを捨て陸上民の中で働く私のもとに、海上コロニーの幼なじみが訪ねてきた。
 「くさびらの道」木耳様全身性真菌症に感染し、キノコに覆われたような状態で死亡する奇病が広まりつつあるなか、製薬会社に勤務する私は、感染対策本部の職員と共に、防疫服に身を包み、立ち入り禁止となった実家のある街へ行くことになった。
 「饗応」出張でビジネスホテルに泊まった主人公のくつろぎのひととき。
 「真朱の街」最先端のバイオテクノロジーの実験をおこなう医療特区に、なぜか妖怪が出没するようになり、魔除けの結界として壁を朱色に塗った〈真朱街〉。子供を連れて逃亡する邦雄は、妖怪に子供を連れ去られ、〈探し屋〉を頼る。
 「ブルーグラス」海の環境保護のために、M岬沖の海域が海洋ドームで覆われることになった。伸雄はかつてそこにこっそり置いてきた、化学反応で成長するオブジェ〈ブルーグラス〉を思い出す。
 「小鳥の墓」ダブルE区(教育実験都市)と呼ばれる、エリート養成のための街で暮らす主人公は、ある日、〈外〉の世界で遊ぶ方法を教えられる。

 おもしろい。最初の4編は井上雅彦監修《異形コレクション》シリーズに発表になっていて、ホラーっぽいノリだが、むしろ結構ハードなSFだ。
 ホラーかB級SFかというような題材が、見事にハードしている。ホラーは苦手なので、こういうのは楽しい。
 「くさびら」とはキノコのことだが、同名の狂言があり、まさに「くさびらの道」の内容に呼応している。
 「饗応」はショートショートで、雰囲気はおもしろいが、これだけでは正直、理解しきれない。
 「ブルーグラス」は、解説の山岸真氏の言葉を勝手に拝借すると、「海洋SF」と思っていると「主人公の人生と心の遍歴を綴った内省的で感傷的な物語」だった。SF?
 「小鳥の墓」東京都で出た有害図書の規制に関する法案が問題になっているが、私としては、この小説に描かれているような非道徳的な描写なしに、同様のレベルの物語を書いてほしいと思う。書けるはずだと思う。(私は多少の規制強化を支持する)。とはいえ、この小説が規制対象になってしまうとしたら残念だが。

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