最近のトラックバック

« 謹賀新年 | トップページ | 『菓子フェスの庭』『リリエンタールの末裔』『夏のロケット』 »

2012年1月 2日 (月)

『大人の科学vol.30 特集:鬼才テオ・ヤンセンの世界』

 19世紀、シャルロッテンブルク工科大学学長フランツ・ルーローは「機械」を次のように定義している。
 「機械とは、運動に対して抵抗をもつ物体(たとえば固体)でつくられ、これらが巧みに組み合わされて、定まった運動を行い、エネルギーをもらって役に立つ仕事をするものをいう」。
 これに対して、オランダの芸術家テオ・ヤンセンが作り続けている「ストランドビースト」(砂浜の生物の意)は、風を受けて砂浜を動き回っているだけのようである。もしそれを見たら、フランツ・ルーローならどう言うか。

 「確かに機械が巧みに組み合わされて定まった運動を行っているようだが、しかしヤンセン君、いったいこれは何の役に立つのかね」
 本書の一項目「生物の機構と比較しながら「ストランドビースト」の歩行を検証!」という記事を書いた市村均氏が、ルーローの言いそうなことを想像してそのように書いている。

 ストランドビーストはキネティックアート(動態学的芸術)と呼ばれるジャンルに属し、プラスティックパイプやビニールシートなどを組み合わせて作られており、大きいものでは全長12メートルにも達する。テオ・ヤンセンが導きだした13の長さ(ホーリーナンバーと呼ばれる)にカットされたパイプを組み合わせて出来る「脚」が、クランクシャフトで連動し、プロペラなどで風力を変換して動くさまは、まさに生物。(ムカデがカニ歩きしているような。または11人12脚みたいな)(ユーチューブ参照)
 ホーリーナンバーはネット上に公開されており、これを参照して世界中で複製や改造が行われている。ビーストはネットを介して、増殖・進化という、生物として重要な要件さえ満たしているというわけだ。

 しかしまあ、いまどき「役に立つ」ことを機械の定義に盛り込むのは、時代錯誤なのかもしれない(未来では、人は楽しみのために走る、by エメット・ブラウン)。

「私亡き後も、どうすれば彼らは生きていけるのか、それがある意味の原点なんだ」
 茂木健一郎との対談で、テオ・ヤンセンが言ったのが上記の文句。彼は今もそのためにビーストを作り続けている。
 ネット繁殖に言及した時点で、彼らの種が生きながらえることは間違いないのだが、寿命不定のアンドロイドならいざしらずプラスティック&ビニール製の個体が生き続ける可能性を考えるというのは、実にスペキュレイティヴである。
(あるいはビーストは、自己保存の役に立つということでルーローの定義をクリアしているのかも。)

 ちなみに本書の付録「ミニビースト」は手のひらサイズ! かわいい!

(この記事は、サイト《司書の駄弁者》に投稿した文章に手を加えたものです)

« 謹賀新年 | トップページ | 『菓子フェスの庭』『リリエンタールの末裔』『夏のロケット』 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

生き物」カテゴリの記事

科学」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/502963/53644301

この記事へのトラックバック一覧です: 『大人の科学vol.30 特集:鬼才テオ・ヤンセンの世界』:

« 謹賀新年 | トップページ | 『菓子フェスの庭』『リリエンタールの末裔』『夏のロケット』 »