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2014年1月23日 (木)

エクーメン

 ジャック・ヴァンス『復讐の序章』再読。良!
 裂開駆動で飛び交う宇宙船がむすぶ人類宇宙の古き良きイメージがここちよい。
 ところでこのシリーズ(魔王子シリーズ)では、銀河に広がる人類の版図を「オイクメーニ」、その法の及ばない所を「圏外」と呼んでいる。
 いっぽう、ル・グインのハイニッシュ・ユニヴァース物と称される小説群では、ハイン人による星間連盟を「エクーメン」と呼んでいる。
 『復讐の序章』を十五年ほど前に読んだときに「オイクメーニ」と「エクーメン」の類似に気づいて、図書館の辞書で調べたことがあった。
 「エクーメン」は造語らしく、載ってないのだが、関連ありそうな言葉は以下のとおり。
 
 ecumenism 世界教会主義(キリスト教諸派の統一を追求する思想)
 ecumenopolis 中枢管理機構をネットワークによって分散させた多核的広域都市 [ <Gk oikoumene(world) + polis]
 ecumenical 1.全般の、全体の、普遍の、全世界の 2.全キリスト教会の [ <LL oecumenic(us) = belonging to the whole inhabited world.  <Gk oikoumen-(to inhabit) + -ikos(ic)] 
 
 引用元不明、すいません。
 ちょっと説明してみると、「教会」とあるのはこのさい無視。たぶん教会関係者が、語源のギリシア語かラテン語から持ってきて内部的に使っていた言葉だから、こんな訳になったのだろう。
 ecumenopolis の訳(というか解説文)が、今風でかっこいい。
 「<Gk」というのは、ギリシア語由来ということ。「<LL」は後期ラテン語由来。
 ecumenopolis の「oikoumene」の最後の「e」には字上符がつきます(横棒)が省略します、あしからず。
 「inhabited」は「人が住んでいる」。 
 ということで、エクーメンの根源的意味は、人が住んでる所、世界、ってところだろうか。
 
 ところで「エクーメン」で検索してみると、高橋源一郎さんのツイートがヒットした。
 2011年01月11日「午前0時の小説ラジオ」・「アキューメン(acumen)」と「アンラーン(unlearn)」・「他人に届く思想」と題された連続ツイート全44回。以下引用。
 
「他人に届く思想」1・1922年生まれの鶴見俊輔さんは戦後を代表する哲学者・評論家ということになるだろう。ぼくは、とてもとても尊敬している。
「他人に届く思想」12・ヘレン・ケラーは自分が「ただことばや思想を覚えただけ」であり、そんなものには意味がないことに気づいた。重要なのは、それをいったんunlearnした後、もう一度、真にlearnし直すことだと考えたのだ。それが彼女のacumen(明察)だったといってもいい。
「他人に届く思想」19・だから、鶴見俊輔は、相手を叩きふせない。どんな相手でも、その相手のことばに「意味の幅」があると考え、応答する。「答は一つではない」と考えて、「では、別の答は」と問い続ける。鶴見がとりあげる対象も、そんな人ばかりだ。たとえば、こんな風に。
「他人に届く思想」23・「…夫の死後、クローバー夫人シオドラは、夫の遺したノートに基づいて、生前会うことのなかった男イシについて伝記を書く。その娘ル=グウィンは、イシの活躍する別世界をつくりだして、ファンタジー『ゲド戦記』を書いた」
「他人に届く思想」24・この話に、いくつものacumenの連鎖があることがわかるだろうか。最初は絶滅した民の末裔イシ。イシは孤独の深みから、立ち上がり、白人の町に向かって歩いた。学者クローバーはイシのacumenを聞き分けることのできるacumenを持っていた。
「他人に届く思想」26・その結果として、ぼくたちは、娘のacumenが創り出した物語『ゲド戦記』を読み、そのacumenに傾倒した宮崎駿のacumenが産み出すことになるものを(その息子によって)見ることができたのである。
(以下、終了後のやりとり)
「エクーメン」は「アキューメン」から来てたんですね RT @nao_capricerabi ちょうど昨年からグウィンのSFを読んでいたので、それと併せても興味深くおもしろかったです。グウィンが未来世界に展開させた「エクーメン」という惑星間組織には、そんなような背景があったんですね
(引用終わり)
 
 果たして「アキューメン」も「エクーメン」に反映しているのか? もちろんル・グインはacumenという言葉を知ってたろうし、星間連盟をエクーメンと名付ける際にacumenを思い出したら、良いイメージの言葉だもの、後押しにはなるだろうな。
 エクーメン天地アキューメン明察、とか言ってみたりする蛇足。
 
P.S. 2014.01.31
 「オイクメーニ」で検索したら、「オイクメネ」での検索結果が表示され、「エクメーネ」がウィキにあることがわかった。ドイツ語で、人間が居住している地域を指す地理学の用語、とのこと。

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